ダウンサイジングとは、機械の小型化や組織の規模を縮小することで、コストの削減や業務の効率化を図ることを指します。以前からこの用語は様々な業界で用いられているのですが、最近になって、車業界でもよく見聞きするようになりました。
今回はダウンサイジング車の特徴やメリット・デメリットについて徹底解剖。代表的なダウンサイジング車も紹介するので、ダウンサイジング車に興味がある人は必見です!
目次
世界で流行中のダウンサイジングって?

現在の車業界では、ダウンサイジングコンセプトと呼ばれる画期的な方式を採用した車が続々と登場しています。自動車雑誌やWebメディアでもダウンサイジングと見聞きすることが多くなりました。
何となく意味はわかるけど、具体的にはわからないという人も多いのではないでしょうか。ダウンサイジングコンセプトとは、ターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給機を用いて、これまでのエンジンと同程度の性能を維持したまま排気量を小型化する車づくりのことを指します。
例えば、2.0L自然吸気エンジンを搭載していた車が、フルモデルチェンジによってパワートレインを刷新したとしましょう。
このときに、2.0L自然吸気エンジンに代わって1.5Lターボエンジンを採用したなら、これはダウンサイジングコンセプトに基づいて設計されています。
また、新型車でもボディサイズや車格的には大排気量エンジンを搭載するべきところを、小排気量エンジン+過給機で補っている。これもダウンサイジングコンセプトに該当します。
車業界でのダウンサイジングは過給機との組み合わせが前提のため、ダウンサイジングターボと呼ばれることも多いです。ダウンサイジングコンセプトを反映させた車のことをダウンサイジング車と呼びます。
日本にもダウンサイジングの波が押し寄せてきましたが、日本では「ターボ=燃費が悪い」や「排気量が低い=車格が低い」というようなイメージが根強いため、欧州や北米に比べると、普及の余地はまだまだ残されています。
さて、そんなダウンサイジングですが、ダウンサイジング車には一体どんな魅力があるのでしょうか?
ダウンサイジング車のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
ダウンサイジング車のメリット




ダウンサイジング車のメリットは3つあります。
燃費性能の向上
一般的にエンジンは排気量や気筒数が多いほど、燃費性能が低いとされています。ダウンサイジング車はエンジンを小型化(小排気量化・気筒数の減少)することにより、燃費性能を向上させました。
エンジンを小型化すると、パワーはもちろん不足します。その不足したパワーを補うのがターボチャージャーやスーパーチャージャーの役目というわけです。
実際にダウンサイジングターボを導入した国産車の事例では、動力性能をそのままに先代比10〜15%ほど燃費性能が向上しています。
税金が安い
ダウンサイジング車は排気量が小さい分、これまでと比べると税金面で大きなメリットが生まれます。自動車税は0.5L毎の区分で税額がアップしていきますが、ダウンサイジングすることで自動車税の区分が低くなります。
そのため、5,000〜10,000円ほど自動車税が安くなったという事例もあります。レクサスのフラッグシップセダンであるLSの先代モデルは、4.6Lの大排気量エンジンを搭載していました。
しかし、フルモデルチェンジでダウンサイジングターボを導入したことで、排気量が3.5Lに縮小。その結果、自動車税はなんと30,000円も安くなっています。
使い勝手の向上
ダウンサイジング車に組み合わされる過給機は、ハイパワーを追求したものではなく、あくまで実用性を重視したものです。そのため、どちらかというと低回転域でのトルクが向上しています。
技術の進歩によりターボラグも少なく、自然吸気エンジンとさほど変わりないレスポンスも手に入れました。実用域での使い勝手が大きく向上したため、過給機を搭載しているにもかかわらず、誰にでも扱いやすいエンジン特性を実現しています。
ダウンサイジング車のデメリット




続いて、ダウンサイジング車のデメリットについて解説します。ダウンサイジング車のデメリットは3つです。
市街地や都市部での走行が苦手
ここでの苦手というのは、ダウンサイジングターボが「市街地や都市部での走行に適していない」ということではありません。むしろ、低回転域でもしっかりとトルクが発生するダウンサイジングターボは、ストップ&ゴーが多い道路でも扱いやすいです。
しかし、ストップ&ゴーが多いと短い区間で加減速を繰り返す必要があり、燃費が悪化しやすいというデメリットがあります。
ダウンサイジングターボは定速巡航を得意とするので、定速巡航が可能な高速道路やバイパス、郊外などと比べると、ストップ&ゴーが多い市街地や都市部での走行は苦手というわけです。
レスポンスが悪い
ダウンサイジング車は小型の過給機を用いて足りないパワーを補います。低回転域からしっかりと過給するので、以前のターボ車のようなターボラグはなく、アクセルを踏んだときのレスポンスも決して悪くありません。
しかし、これはあくまで従来のターボ車と比較したときの話。過給機を搭載しない自然吸気エンジンと比べると、やはりエンジンレスポンスは劣ってしまいます。
ただし、ダウンサイジングターボも進化しているため、レスポンスは悪くないと感じる人もいるでしょう。
静粛性でハイブリッド車に劣る
燃費を向上させるための仕組みといえば、少なくとも日本ではダウンサイジングコンセプトよりもハイブリッドシステムの方が有名です。
それぞれに異なる利点・欠点があるのですが、ハイブリッド車と比べてしまうとどうしても気になってしまうのが、ダウンサイジング車のエンジンノイズ。
ハイブリッド車はエンジンとモーターの力で走行します。走行状況に応じて、エンジンかモーター、もしくは両方を使って走行するので、エンジンがかかっている時間はわずかです。
エンジンが動いている最中もモーターがアシストしてくれるので、アクセルをめいっぱい踏み込まないことにはエンジンノイズが聞こえてきません。
ダウンサイジング車は低燃費ですが、システム自体は従来のターボ車と変わりないので、走行中はつねにエンジンノイズが車内へと侵入してきます。それがうるさいかどうかは車種にもよりますが、ハイブリッド車と比べてしまうと、どうしても静粛性は劣ってしまいます。
代表的なダウンサイジング車




ダウンサイジング車の普及がイマイチ進んでいない日本ですが、ダウンサイジング車を導入している国産自動車メーカーは数多く存在します。
国産自動車メーカーにおけるビッグ3であるトヨタと日産、ホンダは、ダウンサイジング車をいち早く日本市場に投入。スズキやスバル、三菱もダウンサイジング車をラインナップしています。
ダイハツとマツダに関しては、ダウンサイジング車に該当しそうな車種の展開をしているものの「ダウンサイジング車」だと明言はしていません。
トヨタは2018年に発売したばかりのカローラスポーツに、1.2L直列4気筒のダウンサイジングターボを搭載しています。
さらに、トヨタが展開する高級車ブランドのレクサスでは、フラッグシップセダンのLSが4.6L・V型8気筒エンジンから3.6L・V型6気筒ツインターボに変更し、大胆なダウンサイジングを実施しました。
日産は1.2L直列3気筒エンジンにスーパーチャージャーを組み合わせたダウンサイジングコンセプトを、売れ筋コンパクトカーであるノートに導入しています。ホンダは人気ミニバンのステップワゴンに、1.5L直列4気筒ターボエンジンを搭載しました。
先代モデルまでは2.0L直列4気筒自然吸気エンジンだったので、こちらもダウンサイジングターボに該当します。スズキは世界戦略車のスイフトに1.0L直列3気筒ターボエンジンを採用。
スバルはレヴォーグに1.6L水平対向4気筒ターボエンジンを採用しています。三菱もエクリプスクロスに1.5L直列4気筒ターボエンジンを搭載し、ダウンサイジングコンセプトを反映しています。
まとめ




今回は世界で流行中のダウンサイジング車について解説しました。これまではどんな自動車メーカーも自然吸気エンジン搭載車が主流でしたが、今後は徐々にダウンサイジング車に移行していくものと思われます。
ダウンサイジング車には上記のようなデメリットもありますが、これまでダウンサイジング車が進化してきたように、技術の進歩によって改善されていくはずです。日本では「ターボは燃費が悪い」や「ターボは壊れやすい」というイメージが先行していますが、それも昔の話。
現在はまったく違うものに生まれ変わっています。故障の頻度は従来のエンジンと大差なく、燃費性能も優れています。
そして、日本では自動車税などの税金面で有利という大きなメリットもあるので、気になる人はディーラーで試乗してみましょう。スムーズな加速感や優秀な燃費性能にきっと驚くはずです。